恩田陸/夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

「ほんわかする本を読みたい!」という曖昧な注文に対して、友人が薦めてくれた本。著者の本を読むのは初めてだったのですが、確かに、とってもほんわかすることができました。それと同時にほんわかしながら、登場人物を本気で応援してしまうような物語で、とっても癒されました。

高校の全生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという年1回のイベント(歩行祭)に関する物語。なので、1冊通して流れる時間は、丸1日だけ。なのですが、登場人物(高校生)の過去なども織り交ぜて語られており、作中の経過時間以上の濃密さを感じます。

でも、作品を通じて漂う空気感みたいなものがとてもよかったです。登場人物が高校生だからっていうのもあるとは思うのですが、なんていうか清潔で青臭くて、つられて青臭い言葉をかぶせるなら僕らが失ってしまったような気がする雰囲気をもっている感じがします。

少し話は離れるのだけれど、僕は一時期、こういう若さゆえの純粋さを価値とする事は、なんとなく過去を美化しているだけのようで好きではありませんでした。だけれど、最近そうではないのではないかと感じます。というのは、過去の純粋に努力した経験や思い出というのは、単に回顧して現在の埋め合わせにするためのものではなく、現在の自分が現実と直面する上での武器なり、防具なりになってくれていると強く感じるからです。卑近な例で言うと、困難な仕事に直面して、くじけそうになった時や自分の無能力さにうちのめられそうになった時、過去の自分の到達点や努力を思い返して自分を励ましたりすることがよくあります。

正直、メインなテーマはあまりコンテンポラリーなテーマではないと思います。また、それに対するメッセージに関しても、個人的にはあまり共感はしませんでした。

でも、夜を徹して80キロ歩き通すっていう事自体なんとなくワクワクしてしまいますねー。やってみたいな〜。