2006-01-01から1年間の記事一覧

吉本ばなな / ハチ公の最後の恋人

1996年の作品。いわゆる恋愛小説って感じの恋愛小説でした。この人ってこういう作品も書けるんだなあっていうのにちょっとびっくりしました。この作品を読んで、真っ先に思い浮かんだのは「セカイ系」っていう言葉です。なんかセカチューが流行ってた時にあ…

伊藤たかみ / 助手席にて、グルグル・ダンスを踊って

著者のデビュー作。阪神・淡路大震災の1995年に出版されていて、舞台は神戸です。もちろん偶然なのだとは思いますが。著者の他の作品と比較すると、なんていうか非常に具体性の高さが特徴なように思います。そういう意味では、デビュー作にも関わらず、他の…

絲山秋子/ニート

2005年の作品。5編の短編集。 著者の作品は基本的に好きなのだけれど、この作品はちょっと個人的には理解しきれない部分がありました。僕の著者の作品の好きなところは、恋愛を題材に書いた作品であっても、恋愛小説として消化しきれないところでした。なん…

三浦しをん / 格闘する者に○

著者の作品を読むのは初めて。そして本作品は2000年の著者のデビュー作だそうです。もっと著者の作品を読んでみたいなって思わせる小説でした。一言で言えば物語として面白い作品。主人公の就職活動が縦軸に、父親が政治家でその跡継ぎに揉めているっていう…

吉本ばなな/キッチン

オリジナルは確か80年代、だったはず。というわけで、コンテンポラリーかと言えばそうではない作品で、かつ半古典化している作品ですよね。複数の人から薦められてたのにも関わらず、最近まで読んだことのなかった作家・小説でした。 結論としては、物凄くよ…

小川洋子 / 博士の愛した数式

この作品は、著者の中で「密やかな結晶」に続いて2冊目に読みました。 最近、200万部、突破したそうですね。映画の効果もあると思うのだけれど、この作品では何ていうかコマーシャルではないけれど、世代を問わず愛されるところがあると思います。「密やか…

伊藤たかみ/17歳のヒット・パレード(B面)

1996年の作品。著者のデビュー2作目、だと思う。60年代〜70年代のヒットソングに乗って、17歳の男女二人が狂騒的な夏を過ごして、そして死に至るというストーリー。著者にしては珍しく物語としての世界観が、何ていうか現実離れしています。17歳の高校生が…

長嶋有/タンノイのエジンバラ

著者が2002年に発表した作品4篇を収録した短編集。僕が勝手に抱いていた印象として、著者はきっちりとしたいわゆる物語を希求しているタイプかなと思っていたのだけれど、4篇中2篇は生活のスケッチのような作品です。物語があるタイプの2篇「夜のあぐら…

伊藤たかみ/アンダーマイサム

おそらく絶版だったはずなんだけれど、芥川賞受賞の便乗商法で文庫化された2001年の作品。親指が長いという端的な過剰を背負った高校生が主人公です。著者の描く若さやその危うさというのは、良くも悪くも一貫性があると思います。そして、この作品はその一…

小川洋子/密やかな結晶

「博士の愛した数式」の原作者の1994年の作品。というわけで、コンテンポラリーかと言えば、そうではないのですが。芥川賞受賞作家だそうです。僕が初めて読んだ著者の作品。友達から僕の好みっぽいと言われて読んでみたのですが、かなり好きです。「消滅」…

吉田修一 / 東京湾景

仲間由紀恵主演でドラマ化された作品。多分、著者の作品を立て続けに読んでるせいもあるだろうけれど、あまりメッセージ性にも目新しさが感じられなくって、その上、小説としても、それほどストーリー的に魅かれるところがありませんでした。個人的に恋愛小…

最後の息子

「最後の息子」「破片」「water」の三作を収録。「water」。水泳部に所属する主人公が大会に至るまでの話です。物凄くポジティブな主人公とその仲間。でも、しっかり影もあって、同じく水泳部に所属していた主人公の兄はなくなっており、母親はそのショック…

イッツ・オンリー・トーク

タイトル作と「第七障害」の2編の中篇を収録してます。オリジナルは2004年で芥川賞受賞に伴って文庫化したみたい。 「沖で待つ」でいいなあって思ったのですが、この作品で著者の世界に完全にはまりこんでしまいました。個人的には「第七障害」の方が分かり…

熱帯魚

東京湾景の原作者による2001年発行の短編集。「熱帯魚」「グリーンピース」「突風」の三作を収録。「グリーンピース」が、物語として物凄くおもしろかった。かいつまむと、主人公が彼女と喧嘩して仲直りするの話しなのだけれど、タッチがやたら明るくって、…

夕焼け

blogの趣旨とはずれるのだけれど、寮の屋上から夕焼けです。すごく綺麗だったので。

袋小路の男

タイトル作の他に「小田切孝の言い分」「アーリオ アーリオ」っていう2つの短編を収録。著者の作品は、実験的な色彩の濃い「イッツ・オンリー・トーク」みたいな作品と、沖で待つ」のようなじんわりと効いてくる作品との二つに分けられるのですが、この短編…

絲山秋子 / 沖で待つ

僕が初めて読んだ絲山秋子の小説。 著者は早稲田の政経を出た後、総合職として10年くらい働いていて、「総合職・女」ってことに強くアイデンティファイしてる感じがします。もちろん作品もそんな感じで、この本には2編の中篇が収録されているのだけれど、ど…

伊藤たかみ / ミカ×ミカ!

男女双子の中学生の生活を描いた物語。小学校時代を描いた「ミカ!」の続編。 歳の割に随分と大人びた語り手「ユウスケ」のナラティブがものすごく心地いいです。例えば、 そして、ふと思った。大人になると女の人が化粧したくなるのは、いろんな気持ちを隠…

ミカ! / 伊藤たかみ

芥川賞受賞者の旧作。 伊藤たかみは、高校のとき「ロスト・ストーリー」を読んで、それ以来ノーマークだった。その作品は、何ていうか、高校生の僕でも「ありがちだな」って思える感じだったし、いわゆるJ文学の台頭にのっかってる感じもあまり好きじゃなか…

吉田修一 / パーク・ライフ

僕が初めて読んだ吉田修一の小説。タイトル作を含めて2編を収録。タイトル作は、日比谷公園を舞台にして、複数の物語が交錯"しないで"走ってゆくのだけれど、でも全体としては何故かまとまりのある不思議な感じの小説。何ていうか、公園ってそういう場所で…

横山秀夫/クライマーズ・ハイ

友達に薦められて読んでみました。著者の本は初読。というより、こういうタイプの小説は読んだことはなかったです。けど、面白かった。何てカテゴライズすればいいのかなあ、社会派なんだろうか。新聞社のデスクをしていた主人公による、日航機墜落事故の際…

長嶋有 / 猛スピードで母は

著者の本は初読。タイトル作と「サイドカーに犬」という2編を収録。全体的に仄暗いトーンの落ち着いた文体。どちらの作品も子供が主人公で、かつあまり一般的にあまり恵まれていないと評されるような家庭環境(両親が離婚していたり、奔放な異性関係をもって…

保坂和志 / プレーンソング

著者の作品は初読でした。サラリーマンをやってるらしき30過ぎの主人公の日常を描いた、タイトルどおりプレーンなストーリーライン。物語とすら言えないかも知れない生活の描写。アプローチは全く違うのだけれど、明治・大正の私小説あるいは自然主義文学…

吉田修一 / パレード

共同生活を織り成す5人の男女の話。 5章構成なのだけれど、語り手が章ごとに変わって、5人の登場人物がそれぞれ語り手を務めるちょっと変わった話法を使ってます。 「ここで暮らしているのは私と直輝の2人きりよね。でも、ときどきね、私ここにもう一人誰か…

伊藤たかみ / リセット・ボタン

物語として面白かったです。ストーリーの進み方のテンポがよくって1日の通勤の往復だけで一気に読みきれました。自殺サイトで知り合った男女の話。恋愛小説って範疇に入るのかどうかはよく分からないけれど、まあそういうテイストも入りつつ。ここまで読ん…

はじめまして

どうも、synjiといいます。 ここでは、主に小説の感想を書いてゆきたいと思います。