最後の息子

最後の息子」「破片」「water」の三作を収録。

「water」。水泳部に所属する主人公が大会に至るまでの話です。物凄くポジティブな主人公とその仲間。でも、しっかり影もあって、同じく水泳部に所属していた主人公の兄はなくなっており、母親はそのショックで精神を患っている。できすぎだとも思うし、水泳大会でのラストなんか少年小説かよっていうくらい過剰にドラマティックなのですが、何ていうか、こういう話すっごい好きです。吉田修一のポップっていうかキャッチーっていうか、そういうサイドが前面に押し出された作品。

最後の息子」は著者のデビュー作だそうです。いわゆるゲイのカップルの話。ゲイバーのママに食わしてもらってる主人公。そういう生活を自嘲気味にとらえながらも、でも愛されようと努力する、みたいな感じ。
こういう捉え方をするとフェミニストに怒られそうですが、著者の一貫したテーマとして男性のもつ精神的かつ潜在的な暴力性があると思うのですが、その辺りの端緒を見つけることができるような気がします。ただ、僕はこの作品を読んだのがかなり後だったので、新鮮味はなかったし、むしろ雑さの方が気になりました。
著者の小説には奇妙な癖をもった人物が登場することが多いのですが、この小説では主人公はビデオ撮影マニアで、そしてその彼氏は電話を話しながら自分の言ったことを書き留める癖があります。

waterは良かったんですが、他二作が著者にしては若干期待はずれかなと思います。