イッツ・オンリー・トーク

タイトル作と「第七障害」の2編の中篇を収録してます。オリジナルは2004年で芥川賞受賞に伴って文庫化したみたい。
沖で待つ」でいいなあって思ったのですが、この作品で著者の世界に完全にはまりこんでしまいました。

個人的には「第七障害」の方が分かりやすかったです。乗馬をやっている主人公が大会の際の事故で馬を殺してしまう所から始まる物話。分かりやすい喪失から再生の話なのだけれど、何を失って何を取り戻したか、そういうのが「馬」「恋人」みたいな象徴的な形で示されていて、なんていうか伝わりやすいものがありました。

タイトル作は、なんていうか、主人公の設定が物凄くぶっとんだ感じ。さっきの表現を借りると、何を失ったのかよくわからないんだけれど、とにかく何かを失っているって感じの話です。でもそれって現代社会であったり、僕たちの世代の本質をついてるのかも。ぶっとんだ感じの設定である種の思考実験をやってみたって風でもあります。だから僕は感情移入するのは難しかったけれど、でも十分に面白かったです。通勤で読むには微妙だけれど。「やわらかい生活」というタイトルで映画化されるそうです(もうされたのかな)。