三浦しをん / 格闘する者に○

著者の作品を読むのは初めて。そして本作品は2000年の著者のデビュー作だそうです。もっと著者の作品を読んでみたいなって思わせる小説でした。

一言で言えば物語として面白い作品。主人公の就職活動が縦軸に、父親が政治家でその跡継ぎに揉めているっていう家庭事情が横軸に走ってゆくストーリーラインです。就職活動のところは、自分の経験も思い出して面白かったです。もっとちゃんと考えて就職活動すればよかったのかなあ。

主人公が女子大生でその一人称で語られているのだけれど、その語り口が僕にとってはとっても新鮮でした。アイロニカルっていいのだろうけれど、そういう要素っていうのは僕が好んで読んできたところなのだけれど、それでも新鮮に感じます。単なる性差なのかもしれないけれど。

なんだろう、少女漫画ってあんま読んだことないけれど、笑いのタッチとかは僕が勝手に思ってるそれに近いところがあるなあって思います。あと、ハイソな家庭に育ってそれに反抗する主人公像とか。そういうコマーシャルと言っていいようなエレメントを散りばめつつ、少なくとも25歳の成人男子が楽しめるように昇華させている所が、著者の才能だと思います。

まあ全般的に軽いと言えば、軽いわけで、娯楽小説だと言い切る人もいると思います。まあ、それは否定しきれない部分ではあるなと思います。でも、娯楽小説が悪いというスタンスには僕は立っていないし、嫌いならば読まなくってもいいわけですよね。僕はもう一冊くらい読んでみたいなと思いました。