絲山秋子/ニート

2005年の作品。5編の短編集。
著者の作品は基本的に好きなのだけれど、この作品はちょっと個人的には理解しきれない部分がありました。

僕の著者の作品の好きなところは、恋愛を題材に書いた作品であっても、恋愛小説として消化しきれないところでした。なんていうか、そういう上澄みみたいな所を好んで消費してきた僕のような読者にとっては、この短編集はなんていうか、恋愛小説としか読めないような作品が多くてちょっと不満が残ったりもします。まあ、小説を読んで何を感じるかなんて、人それぞれでもあるし、
その時の精神的なコンディションにもよる所が多いので、もしかしたら僕が恋愛小説としか読めないようなコンディションだっただけかもしれないですが。
タイトルもタイトルだし、社会問題に真っ向から(とは言え著者なりのクセのあるやり方で)切り込むみたいな所を期待していたところなのですが。、個人的には肩透かしをくった感があります。

でも随所に著者らしさも見えてはいて、そして、この次の作品が「沖で待つ」という僕の思うところの著者らしさのつまった作品であることも考えると、なんていうか異質とも言えるこの作品の立ち位置は非常に興味深いもののように思えます。一見駄作に見えても、著者の小説家人生にとっては必要なプロセスであったということは、よくある話だと思うし。