小川洋子 / 妊娠カレンダー

1991年の作品。3つの短編からなる短編集。

3篇ともある種、怪談に近いタッチがあるように思います。読後の爽やかさのようなもの、そういうのはあまりなくって、やっぱりゴスなんだと思います。情景描写を多用したグロデスクだけれど美しい、という世界観。

小川洋子さんは村上春樹の影響を受けているとはっきりおっしゃっているのですが、なんていうかゴスロリの人が好みそうなストーリーを書く一面もあるなと思います。それは「密やかな結晶」を読んだ時に思ったのだけれど。何ていうか同じ死の匂いでも(特に最近の)村上春樹からは(社会的)暴力性みたいなものを感じるのだけれど、この人からは耽美さとかそいうのを感じます。この物語は特にその色が濃いような感じがしました。僕はそういう色はあまり好みではないのだけれど、やっぱり全体的な雰囲気や、生活を丁寧に描いている文章は好きです。

本作で芥川賞を受賞して、作家としての地位を確立したのだと思うのですが、最近の著者の作品を読みなれている人には若干アクが強く感じられるかもしれないなって思います。このままの方向で進んでいたら、これだけポピュラーになることはなかったかもしれないと思います。