ポール・オースター / リヴァイアサン

リヴァイアサン (新潮文庫)

リヴァイアサン (新潮文庫)

僕は村上春樹から入ったくちなので、現代アメリカ文学自体にはそれほど詳しくない(というか、サリンジャーカポーティ以降の作家だとオースター以外読んだことがない)のですが、オースターは好きな作家です。初期の匿名的な、脱物語的な作品も好きだし、90年代半ば以降のストーリー志向の物語も好きです。どちらかといえば後者の方が好きかな。

この作品はムーン・パレスに代表されるストーリ志向の作品の一つ。爆発死した作家がどのようにしてそれに至ったのか、その友人の視点から語ったもの。初期の作品を何作か読んだ後にこの作品を読んで、すごく読みやすくなったなあ、と感じたのを覚えています。

この作品のメインのテーマは人生の転機だと思います。それについてはおそらく色んなところで語られていると思うのだけれど、もう一つ重要なテーマだと僕が考えるのは、「経験について語る権利」についてです。語り手が独占的に「語る」権利をもつ小説というメディアでそれを行なったのは非常に実験的だと感じます。