ミシェル・ウエルベック / ある島の可能性

ある島の可能性

ある島の可能性

最近映画化された「素粒子」というの作品の著者であるフランス人作家による最新作。

形式としてはいわゆるSFという体裁、そして売り出され方をしているのですが、完全なSFというわけではありませんでした。ある種のメタフィクションで、メインのストーリーは現代のコメディアンの一生です。それに対して彼のクローンが注釈をつけるという形式をとっています。

面白いかと言われれば、それなりに好奇心をもって読みすすめられるし、著者の人文科学への知識の深さ、社会科学的な洞察の鋭さもあって、示唆的な部分、そしてもっと考えてみたくなる部分も大いにありました。
ただ、著者の人間観にある種の偏り−性愛を人間という種のメインテーマに据えている−が僕にとっては少し肌が合わなくって、示唆的な部分が多いにも関わらず、この作品に関して深く突き詰めてみようというような気が個人的には減ぜられてしまいました。

でも、著者は非常にアグレッシブに未来について予測していて、一読した限りにおいては社会科学的に説得力があるように感じられました。