佐藤友哉/1000の小説とバックベアード

1000の小説とバックベアード

1000の小説とバックベアード

著者の作品は初読。もともとはミステリ畑の人らしい。1980年生まれという事で、ほぼ同世代の作家さんです。

小説とは何か、文学とは何か、ということがテーマ。「片説家」という架空の職業を設定することで、「小説家」あるいは小説を相対化し、あるいは「本物の小説」と「偽者の小説」に残酷に切り分けることを可能にした上で、過剰なくらいにヒロイックで現実離れしたメタフォリカルな(なのかな)冒険譚を描くことで、テーマを論じた作品。
著者の他の作品を未読なので、この作品が自己批判なのか、それとも(自分は違うと明確に切り分けた上での)他の作家への攻撃なのかはよく分からないのですが、小説というメディアで、小説というジャンルを論じるというのは、極めて実験的な形式ではないかな、と思います。

ちょっと気になった点を以下少し。SFやライトノベルや、そういうものを書いてきた人というのは、現実離れした設定を軽々と書いてしまう。それは、それで素晴らしい能力だと思うのだけれど、あまりに軽々としているために、軽薄だという印象を読み手に与えることもしばしばあるな、と思います。あまりにもそれを多用するのはどうなのかな、と。