柴崎友香/青空感傷ツアー

青空感傷ツアー (河出文庫)

青空感傷ツアー (河出文庫)

著者の小説を読むのは2作目。今年読んだ本の中で今のところベスト。

もう、なんていうか、この人の書く女の子っていうのは、何でこんなにキラキラしてて、瑞々しくて、フリーダムで魅力的なんだろうって、本当に思ってしまう。僕が女性に生まれてたら、この人の描く女の子みたいに、関西弁でだらだらだらだらだらだらと独白したい。マジで。

なんていうか、この小説を一言でいうと、きらめき!っ感じ。本当に何気なく世界をきりとって、語り手に何気なくだらだら独白させているだけなのだけれど、何ていうか風景が光に満ちてるような感じがするのは、単純に「何気なく」「だらだらと」じゃないからなんだろうと思います。でも、わざとキラキラさせてみましたみたいな作為性が全く感じられなくて、ナチュラルなんですよね。全然感触は違うんだけど、そこはかとなく村上訳のホールデンの語り口を思いださせる感じ。

女の子(26歳と21歳)二人があてもない旅に出て結果として特に得られるものはないっていう、下手をすれば本当にありがちなモラトリアムを描いただけの話になってしまいそうなんだけれど、そういう匂いは全くしないです。僕はモラトリアムな感じは大好きなんですが。
結局、モラトリアムな感じを謳歌するっていうのは、何ていうか何かから逃避の代償行為的なもんだよなーってこの本を読んで思いました。つまり、逃れたい何かと対極にはあるかもしれないけれど、同じ地平にとどまっているという。でも、このフリーダムな感じは、なんていうか解放されたとかそんなんじゃなくて、ナチュラルにフリーダムなんだっ!!

ともかく、すっごいよかったです。旅がしたい、音生さんと一緒に。無理なのは分かってるけど、僕はしがないリーマンだけど、それならせめてキラキラと世界を切りとってたい。