舞城王太郎/阿修羅ガール

阿修羅ガール (新潮文庫)

阿修羅ガール (新潮文庫)

著者の小説は初読。

この小説を、ブックカバーをつけて、通勤電車で読んで、隣の人に単語を切り取って見られてたら、かなりの確率で変態と誤解されるようなそういう小説です。少なくとも、前半部分。僕は思いっきりそれをやってしまって、「ま、いっか一期一会」とか思って開き直ったのですが。そういう意味で物凄く好き嫌いが分かれるだろうなあと思います。

物語の構成として、前半から中盤まではっきり言ってめちゃくちゃで変態的なストーリーで、結末で「いや、ここまでのめちゃくちゃな感じはメタファーで、こういう事をいいたいがためにこういうストーリー書いたんだよ」みたいな解説をつけてるような構成になっています(ばらしちゃったら隠喩じゃなくて直喩だけれど)。でも結末までたどりつかなかったら、明らかにただの変態小説だなあと思います。
でもある程度結末の説得力があるのが物凄く不思議です。いや、冷静に考えてみると、そこまでの変態的なストーリーって絶対いらないんだけれど。前衛的っていうほどアーティスィックな意図も感じないんだけれど、形容するとすればそうなるのかなと思います。

で、結末の感触っていうのは、僕はかなり好きです。メッセージとしてはまるきし斬新なものではないと思うのだけれど(でもこういうのは僕は好きです)、オリジナルの表現と語り口で、一言で言えば自分の言葉で語っていて、その表現と語り口が僕の好みとあっているというか。

ともかく、著者の他の作品も読んでみたいなと思える小説でした。