森見登美彦/太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

著者の小説を読むのは「夜は短し・・・」に続いて2作目。

内容は「夜は短し・・・」と共通するところが多い、というか主人公もヒロインチックな人も、殆ど設定や性格が同じです。ダメ学生×天然美女学生×京都。逆に言えば、同じくらいサクサク読める、読みやすい作品です。偉大なるワンパターンですね。

「夜は短し・・・」や本作の主人公を草食系男子あるいはその変種と評している言説を結構みるのですが、絶対そうではないと思うし、著者もそう思われたくないんじゃないかと。圧倒的に異なるのは清潔感だし、おしゃれさだし、異性に対する思い(彼女は欲しいという気持ち)、です。こういう風に真面目に記述するのも何だかバカみたいだけれど。でも、本作や「夜は短し・・・」がヒットした理由を考えてみると、物語としても面白さはもちろんあるのだろうけれど、そういう風に受容されたからというのもあるのかもしれないと思います。確かに、(ガツガツしない(できない))可愛らしさという点ではちょっと共通するのかもしれない。そういう意味では時流に乗ったとは言えなくもないのかなと思います。ともかく、愛すべき人たちではある。

京都に出張に行った時に、三条大橋のスタバで読んだのですが、すっごい懐かしくてよかったです。京都で学生生活を過ごしてよかったな、と思いました。物凄くバカバカしいのだけれど、物凄くよく分かるし、共感もします。でも今出川通りにオシャレなカフェがたくさんできていて、びっくりしました。本作の登場人物たちみたいな人にとっては、ますます生きづらい環境になっているのではないかなと思います。でも、下宿や大学内にしぶとく生き残っている事でしょう。

ふと思ったのだけれど、著者に主人公の5年後みたいな小説を書いてみてもらいたいなと思いました。できれば、思いっきりバカバカしく書いて欲しいです。言われなくてもバカバカしく書きそうですが。だって、著者がこのまま学生ばかり描き続けたら、バカバカしさは学生の特権みたいな感じになってしまう!社会人だってバカバカしくしたいですよね・・・。