吉田修一 / パレード

共同生活を織り成す5人の男女の話。
5章構成なのだけれど、語り手が章ごとに変わって、5人の登場人物がそれぞれ語り手を務めるちょっと変わった話法を使ってます。

「ここで暮らしているのは私と直輝の2人きりよね。でも、ときどきね、私ここにもう一人誰かがいるような気がするのよ。うまく言えないけれど、それはきっと、2人で生み出したモンスターのようなものなのよ。」

このフレーズに僕がこの小説を読んで感じたことが凝縮されているような気がします。何ていうか、人の人との関わりの織り成す危うさみたいなものをもの凄く感じた小説でした。

社会が個人に還元されないことはもう言い尽くされてるわけだけれど、多かれ少なかれ人間が集まればその性質は個人には還元されることじゃないって思います。人間の集まりっていうのは、1+1=2じゃない以上に、2cm+2cm=5㎏になるような現象で、単位が違うというか、なんていうか。だから個人には還元されないし。さっき引いたフレーズは、そういうことをすばり言ってるように思います。

と同時に、この小説で示されてることで面白いなって感じたことは、他人っていうのは結局他者であり続けるということです。この小説は、各章でそれぞれ語り手が変わってゆくのだけれど、語り手によって、それぞれ同じ現象の見方はもちろん違うし、感じ方も違うし、それは当然だけれど、他人とっては分からないものでありつづける。

人の関わりの、他者であり続けながらも一つでもあり続ける、その不思議さや危うさを、強く感じました。そんな小難しいことを考えなくても、楽しんで読める小説だと思います。楽しく読めました。