ミカ! / 伊藤たかみ

芥川賞受賞者の旧作。
伊藤たかみは、高校のとき「ロスト・ストーリー」を読んで、それ以来ノーマークだった。その作品は、何ていうか、高校生の僕でも「ありがちだな」って思える感じだったし、いわゆるJ文学の台頭にのっかってる感じもあまり好きじゃなかった(ちなみに、当時の僕は「愛と幻想のファシズム」を読んで、すっかり村上龍にはまってて、彼がJ文学をやたらけなしてたので、そんなもんなんだって思ってた。今は彼には物凄く懐疑的、っていうかあまり好きではないけれど)。

でも、この作品、オリジナルは確か2000年発表なのだけれど、物凄くよかった。こういう子供が主人公の本を読むのが久しぶりっていうのもあって新鮮だったし、もともとこの手の少年小説は好きだし。それに成長への反抗っていうのは、僕にとっても現在進行形でテーマではあるし。

この本を読んで考えたことは、何故大人は子供をイノセントなものとして描きたがるかってこと。自分の子供の頃を思い出したら誰だってわかると思うけれど、子供だって狡猾だし、僕は絶対イノセントな存在ではないって思う。そんなこと誰だってわかってると思う。でも、こういう僕自身だって、子供時代、いや学生時代ですらを対象にして、無邪気さを取り戻したいって思うこともままある。

もしかしたら、それは、人間に無邪気な時代なんて存在しない、人間は無邪気なもんなんかじゃないってことを認めたくないから、そうするのかもしれないって思う。人間は生まれながらにして狡猾な生物だって認めるよりも、「今はもちろんイノセンスな存在なんかじゃないけれど、それは大人になる過程で失われただけだ」って考える方が楽だから。そういう風に社会的に子供はイノセンスなものであるってことが擬制されただけじゃないか、そういう風に思ったりした。