絲山秋子 / 沖で待つ

僕が初めて読んだ絲山秋子の小説。
著者は早稲田の政経を出た後、総合職として10年くらい働いていて、「総合職・女」ってことに強くアイデンティファイしてる感じがします。もちろん作品もそんな感じで、この本には2編の中篇が収録されているのだけれど、どちらの主人公も30過ぎの総合職・女。

こういう物凄くローカルな感じで作品を書いてしまうと、なんていうかある種の内輪ウケみたいな所になりがちだと思うのだけれど、著者の(少なくとも表面的な)アイディンティを共有できない僕にも、なんかじわんと伝わってくるもののある作品群でした。このことって逆に言うと、「総合職・女」や「負け犬」っていうのは、現代社会を構成する単なる一つのサブカテゴリじゃなくって、今の時代の空気を象徴するものなのかもしれないなと思う。だから、僕たちにも伝わるのかなって。

文体は軽快で気持ちいいし、難解さのかけらもないし、1時間足らずで2編読めてしまいます。ものすごく個人的な事情なんだけれど、僕は社会人になって間もないので、同期の交流みたいな描写を読んで、同期を大切にしようって思いました。