吉本ばなな / ハチ公の最後の恋人

1996年の作品。いわゆる恋愛小説って感じの恋愛小説でした。この人ってこういう作品も書けるんだなあっていうのにちょっとびっくりしました。

この作品を読んで、真っ先に思い浮かんだのは「セカイ系」っていう言葉です。なんかセカチューが流行ってた時にある種の小説を形容してこういう風に言ってたなあと思いました。僕が解説するまでもないかもしれないし、(その手の作品をあまり読んだことのない)僕が解説するのは適当ではないと思うのですが、「キミとボクの二人しかいないような世界観」を持った作品(群)のことです。この話の特に後半の閉ざされた感じは、何ていうか(僕の思う)セカイ系みたいな感じなんじゃないかな、と思います。だけれど、前半展開した主人公の複雑な家庭環境をしっかり後半で回収している辺りが、著者らしいと思います。なんていうか、いわゆる二人だけ暮らしの描写が続いている箇所は、個人的には少しきつかったです。

著者の作品を読むのは久しぶりだったので、やっぱり何ていういうか文章一つ一つが綺麗で独特だなあって思います。メタファーばっかりの感じではなくて、基本的には直接的なのだけれどあたりは何故か柔らかいような感じ。ポエティックっていうよりはリリカルな感じがします。響きが綺麗っていうか。さすがに、長い話でこれをやられるとちょっとくどいような気もするのだけれど、100ページ強のこの作品だと心地いいです。