伊藤たかみ/アンダーマイサム

おそらく絶版だったはずなんだけれど、芥川賞受賞の便乗商法で文庫化された2001年の作品。

親指が長いという端的な過剰を背負った高校生が主人公です。著者の描く若さやその危うさというのは、良くも悪くも一貫性があると思います。そして、この作品はその一つの完成形であろうと思います、この主人公の親指の長さに象徴されるように、どこか過剰な若さを描き続けたのが著者。村上春樹が80年代に描いた、どこか欠如した若さとは非常に対照的なように思います。これが90年代の若さであるのであれば、2000年に突入した現在の若さとは一体どういうものであるのだろうか、と考えてしまいます。

ともあれ、ここまで一貫した若さ観みたいなものを徹底されると、イノセントすぎるとかそういう批判は無意味で、こういう小説から何を読み取れるかを考えさせられてしまいます。creepやanyone can play the guitarを歌ってた頃のradioheadを思い出しました。そのくらい完成度の高く感じられた作品。

ただ、おそらくこのモノローグの多さは、好き嫌いが分かれると思います。よくも悪くもライ麦畑的な感じのするモノローグがたっぷり入ってます。個人的には、こういうのってむしろ好きだし、物語はハイスピードで展開されていくので、あまり気にならないと思うのですが。本作では「体を外れる」という仕掛けを通して(「ミカ」の少年に語らせるという仕掛けのように)、存分にモノローグを盛り込んでいます。僕は、好き。多分、ライ麦畑、大好きなんだろうなあ。